ここで書いたAさんのお母さんが、先週亡くなられた。
気管切開からさらに2週間頑張られたが、容態が急変し、最期は親族誰も看取ることができなかったそうである。

葬儀などの一連の行事を終えたAさんと、今日食事した。
「8年間、本当にお疲れさんでした」と言うと、Aさんはひとこと。

「肩の荷が下りたというか、ほっとしたわ」

食事をしながら、Aさんはぽつりぽつりと語り出す。

母親の入院経験は、出産時だけ。本当に全くの病気知らずだった。それまでは仕事や趣味に邁進し、飛び回るように外出していた。
だから、自分の体が思うように動かないことが、どうしても受け入れられない。

落ち込み、泣き、荒れ、誰の言葉にも耳を貸そうとしない。
それまで社交的だったのに、どんどん内にこもっていく。最後まで、自力で立ち直ろうとしないままだった。
病院のスタッフにも、かなり迷惑を掛けてしまった。

病院側からは、3ヶ月ごとの転院を宣告される。
少しでも遅れると、「次の方が待っておられるので困るんですよ。病院は2〜〜3ヶ所予約しておくものですよ」と怒られる。

そうこうしているうちに病気は進行し、寝たきりになり、しゃべれなくなり、自力で食事ができなくなったので、胃ろうの手術。
胃ろうの処置ができる療養病棟を持つ病院は、地域に2ヶ所しかない。

ここ数年は、この2つの病院を半年ごとに転院する生活だった。

この8年間、仕事をしている時も、家にいる時も、遊びに行っている時も、心のどこかでいつも母親の容態が気になる生活だった。
帰省する交通費もばかにならないので、そうしょっちゅう見舞いに行くこともできない。
だから、いつ病院から電話がかかるか、呼び出しがあるか、気を抜くことができなかった。

ガンが全身に転移して亡くなった父親はやせ細り、顔も土色だった。
でも母親は、胃ろうのおかげで栄養状態がよかった。だからやつれた感じは全くなく、死に化粧を施してもらうと本当に生きているようだった。

余命半年という宣告から、既に8年。
とにかく長かったせいもあり、涙の少ない葬儀だった。
悲しいけれど、悲しみも半分だった。

そんなことをつらつらと話した後、Aさんはほっとしたような表情を見せた。

Aさんのご両親がお住まいだった所には、その地方独特の様々な風習がある。
冠婚葬祭の段取りにも、いろいろあるらしい。
自宅での葬儀が基本であるこの地方では、都会では主流の会館での葬儀に眉をひそめる人たちも、まだたくさんおられるとのこと。

「それでも4年前よりかは、会館で葬儀をする人、ものすごい増えてたわ。年取った人は、畳なんかに座られへん。みんな椅子に座ってる。子供や孫はみんな町に出てしもうてるのに、自宅での葬儀なんて、物理的にもう無理やわ」

Aさんは、ご両親とも会館で葬儀をされた。
4年前にお父さんが亡くなった時には、年長の親戚の人たちからいろいろ小言を言われてあたふたしたけど、その時の教訓やら段取りを記憶していた今回は、

「疲れも半分、気遣いも半分で済んだわ」

そんなしんみりした話を聞いた後、Aさんがごそごそと出してきたのは、パイナップル。

冠婚葬祭の手土産は、「とにかくかさばる物でなければならない」というのも、Aさんの実家近辺での風習のひとつ。

「年寄り世帯の物置の整理したら、そういう時の定番で配る毛布やらシーツが、未開封のまま山のように詰まってるわ」

そんな理由で配ったパイナップルの余りだそうで。

現在、部屋中にパイナップルの香りが充満中。
丸ごと1個、どうやってお腹に収めましょうかね。





新しい葬送の技術 エンバーミング―遺体衛生保全
新しい葬送の技術 エンバーミング―遺体衛生保全
公益社葬祭研究所


JUGEMテーマ:四十路のつぶやき


  • 2020.07.22 Wednesday
  • -
  • 23:53
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

Comment
8年かぁ。。。長かったんですね。
私の親も、祖母が亡くなったとき、同じような
ことを言ってました。

どうすれば、理想の最期が迎えられるのでしょうかね。
みんな、病院で胃ろうしながら死にたくないはずだと
思うんですけど・・・。

こういう話、もっと真剣にしないといけない
時代になってきたのかな、と思います。
  • ごじゃえもん
  • 2008/10/29 22:03
たまにお話を聞く程度でしたが、それでもいろいろと考えさせられる出来事でした。

年齢を重ねることは、誰しも未経験です。
こういうことを考えるスイッチは、核家族が進むまではバトンパスされていたのですが、今はそれが難しくなりました。

想像しづらいんですよね。こういう話はほとんどの方にとって、他人ごとだから。
だから最近、悲惨な出来事を目にする機会が増えたのかもしれません。
  • ひー
  • 2008/10/29 22:57





   
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